人の体がゆがみやすい理由
人の体が変わりやすい理由として、二足歩行という非常に高度な動きが深く関係しています。
私達は何気なく立って歩いていますが、二本足で体重を支えて立ったり動き回ったりするというのは、複雑精緻な動きが求められます。
人は立ったことにより、重力のすべてを足底で受けることになりました。
一般に、歩くときには体重の3倍程度の負荷が足にかかります。
体重60キロの人なら、1歩ごとに180キロもの重量がかかっています。
階段の上りは体重の4倍程度、下りなら6倍。
さらに走るときには、接地の瞬間に15倍もの負荷がかかります。
60キロの人なら、1トン近い重量です。
このように、足は歩いたり走ったりするたびに大きな衝撃を受けるため、衝撃がそのまま脳に伝わらないよう、足の多くの骨はパズルのように組み合わさって立体的なアーチが作られ、「土踏まず」という独特の構造をしています。
このアーチ構造は、全体重を支えるスプリングであるとともに、体全体の重心を足の中央に定める役割を担っています。
このアーチのバランスが崩れると、ちょうど地震の時に建物の揺れが上に行くほど大きくなるように、腰、肩、首、噛み合わせに大きな影響が出ます。
たとえば、靴ずれやウオノメができると、無意識のうちに痛む足をかばうため、骨盤がずれ、背骨がねじれ、肩が傾き、腰痛になってしまうことがあります。
土台にあたる足のわずかな狂いは、容易に上半身のねじれを生じさせるのです。
土台としての足裏の筋肉は四層からなり、体全体を支えると同時に、バランスよく立つためのセンサーの役割を果たしています。
足裏と三半規管、目(視覚)の信号を受けて小脳が常に全身の筋肉に指令を出すことで、人は立っていられるのです。
人は砂袋をつけたマリオネット
足裏のバランスが、体の上部に直接影響を与えるというのも、実は人間の筋肉のつき方に起因しています。
人体は常に重力の影響を受けバランスをとっていますが、中でも難しいのが前後のバランスです。
体のパーツは基本的に左右対称になっているので、比較的左右のバランスは取りやすい反面、前後のバランスは大変難しいのです。
人体は、ちょうど砂袋をつけたマリオネットを立たせたようなものです。
骨格に、頭蓋や内臓といったおもりをつけながら、筋肉という糸でしっかりと引っ張って立たなければなりません。
このため人は、砂袋を引っ張るための筋肉、足裏から始まり、ふくらはぎ、背筋、後頭筋を通って、目の上部までつながる背面の「起立筋」が非常に発達しているという特徴があります。
頭部というのは、顔面も頭蓋も重心よりも前に位置します。
内臓も前寄りです。
つまり、前に倒れこまないよう起立筋がしっかりと引っ張っているのです。
内臓の荷重を含めた体全体の重さを支えているのが、起立筋のリレーション(連動)なのです。
この人体を後ろから引っ張る筋肉を「伸展系」といいます。
後ろに引っ張る筋肉に対して拮抗しバランスをとるのが腹筋に代表される「屈曲系」です。
この屈曲系の筋肉はアゴの上部から始まり、骨盤へつながり、足先へと至ります。
根本である足のバランスが崩れると体全体に連動し、接合点であるアゴにダイレクトに影響します。
逆に、アゴのバランスが崩れれば、体全体に歪みが伝わる、という構造になっています。
参考文献
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