整体とマッサージの違いについて
誤解のないように一言でお答えするのが難しいので、長くなってしまいますが、この場を借りて私なりにまとめてみようと思います。
1.整体師は民間資格、マッサージ師は、あん摩マッサージ指圧師という国家資格です。
整体もマッサージも手技療法であることには変わりません。
手技療法(しゅぎりょうほう)は、古代より行われてきた手で行う療法で薬やサプリメント、器械や道具などを一切使わずに素手だけで行います。
療術、徒手療法、マニュアル・セラピーとも言われ、「触る・なでる・揉む・叩く・擦る・押す・身体の他動的操作および自動運動とその誘導」などにより症状を改善させる治療法をさします。
日本では按摩マッサージ指圧師、柔道整復師、理学療法士のみ国家資格となり、その他はすべて民間資格となります。
参考WEBページ 手技療法のまとめ
国家資格取得者在籍のマッサージ店の多くは○○治療院という名前がついており、施術所の開設には保健所への登録が必要になります。
一方、整体・カイロ・リフレクソロジーなどは民間資格ですが、「身体に害を及ぼす恐れがなく」、「国家資格と異なる施術」であれば、保健所への登録はせず、看板を出して営業ができます。
これは過去に、国家資格者からの訴えに対して、「人の健康に害を及ぼす恐れのない施術は違法でない」という昭和35年の最高裁判所の判例があります。
また、昭和47年に厚生労働省から、「整体療法は、脊椎の調整を目的とする点において、あん摩・マッサージ・指圧と区別される」と認定されました。
参考WEBページ 整体師のための法律問題
手軽な「癒やし」急増 「マッサージでない」 リラクセーション200店超 石川県内
関連ページ りらく屋は民間資格で営業しております。
2.整骨院でのマッサージ
整骨院には、柔道整復師という国家資格取得者がいます。
あん摩師、鍼灸師、整体師が一緒に働いているところも多いようです。
整骨院でも肩こりや腰痛に対するマッサージを受けられます。
しかし実はこれは完全な違法行為で、本来の業務は打撲や捻挫の治療、骨節や脱臼の応急処置をテーピングや電気治療などで行うところです。
ゆえに肩こり、慢性の腰痛は保険適応外です。
もしそれらに健康保険を使用すると、お客さんも健康保険に対する不正請求となり詐欺罪に問われかねません。
整骨院の違法マッサージ業務が蔓延しているため一般の方達にとって、「整骨院は保険適応で慰安のマッサージが受けられるところ」と誤解され始めています。
参考WEBページ 整体マッサージと整骨院、違いはなんでしょうか。
3.それぞれの定義
ウィキペディアでは「整体(せいたい)とは、脊椎・骨盤・肩甲骨・四肢(上肢・下肢)など、からだ全体の骨格や関節の歪み・ズレの矯正、骨格筋の調整などを、手足を使った手技と補助道具でおこなう技術体系およびその行為。医療制度から見れば補完代替医療の一種、法制度からは医業類似行為の一種とされる。「整体術」・「整体法」・「整体療法」 とも呼ばれる。光線療法・温熱療法など周辺の技術を含め、以前から療術の一つとされてきた歴史 があり、今もそのように扱われる。」
となっています。
一方、「マッサージ(英: massage)は、直接皮膚に求心的に施術することにより主に静脈系血液循環の改善やリンパ循環の改善を目的にした手技療法である。マッサージは、フランスで生まれた手技療法(仏: massage、マサージュ)を指すが、同様の効果を得られるものとしてタイ式や朝鮮式のマッサージも便宜的に「マッサージ」と呼ばれる。
マッサージには静脈・リンパ循環を促進する効果がある。スポーツ・運動時前後には、筋肉緊張をほぐしたりするためにマッサージが用いられる。他にマッサージによる(適度な)刺激などにより、緊張の緩和をもたらし、筋肉痛を和らげる、排便を促す、気分が和らぎ眠りを誘う、等がある。
現在、マッサージは通常医療の場でも(リハビリテーション等々)、代替医療の場でも、様々な健康増進目的で個々人が自分自身に行う形(セルフマッサージ)でも行われている。」
となっています。
と、いうわけで本来的な「マッサージ」は
●末端から心臓に向かって行う
●素肌に直接手を当てて行う
●骨(骨格)ではなく筋肉や血管(血流)への働きかけ
といった特徴があります。
しかし実は上記の内容はおおよその説明でしかなく、整体にもマッサージにも明確な定義はありません。
「資格のない者がマッサージを行うのは違法」とされていても、厳密にどのような行為がマッサージに当たるかは決まっておらず、しいて挙げるなら「対象者が痛みを感じ、危害を及ぼす可能性のある行為」というくらいです。
参考WEBページ 【マッサージで肋骨折られた!】資格のない整体師に注意
そして、マッサージは業務独占資格であり名称独占資格ではないので「マッサージ」の看板を出してマッサージに見える行為をしていても経営者が「これはマッサージではない」という場合や、「利用者が痛みを感じない」という場合は違法とはなりません。
整体について、私が学校で習った技法は指圧を基礎に体系化されたものや、英国式のリンパドレナージュなどですが、整体師養成学校には
●日本の古流柔術の流れを汲むところ
●中国医学(推拿すいな)の流れを汲むところ
●「骨・筋肉・経路・経穴・リンパ」全てからアプローチする技法をとりいれているところ
など様々な種類があります。
そのために、整体師だからこの技法、という見分けはできません。
もともと、「わかりやすさ」や「イメージの良さ」、「認識不足」からマスコミなどで整体も指圧もリフレクソロジーも「マッサージ」として安易に喧伝され、浸透してしまっています。
そして、「整体」というと「ボキボキ」=カイロプラクティック=「痛い、恐い」という誤解もあります。
日本において整体やカイロプラクティックは民間資格でグレーゾーンということもあり、外国人による開業も増え、「整体マッサージ」「ソフトマッサージ」「クイックマッサージ」「ソフトカイロ」「揉みほぐし」「手もみ」「癒しのマッサージ」「タイ古式マッサージ」「バリニーズマッサージ」「ロミロミ」「中国式マッサージ」「耳ツボエステ」「ボディケアサロン」「○○セラピー」「アロマオイルトリートメント」「リンパドレナージュ」など挙げればきりがないほどさまざまな形態、看板の店があります。
「整体」や「マッサージ」自体に明確な定義がないのですから、これらの定義や違いはもっとあいまいです。
内容は同じで名前だけ違うということもあるほどです。
このことで「整体」と「カイロプラクティック」、「マッサージ」、「リフレクソロジー」はますます混同されたり誤解されたりしてしまっています。
4.マッサージ師によるマッサージ
はり・きゅう・マッサージなどは、医師が保険診療による治療を行っても効果が不十分であると判断したときに、医師の同意のもとに保険給付の取り扱いが可能となり ます。
逆に「医師がマッサージを行うべき」と認めた時以外は実費負担になります。
5.「整体師」は下手で危険?「マッサージ師」は上手で安全?
整体師は民間資格のため誰でも名乗ることができます。
そのために、「どうせ何の勉強もしてないんだろう」「下手に決まっている」「整体師に体を触らせるなんて恐ろしい」と考える方もいるようです。
実際、整体師による事故や事件(わいせつ行為、怪我をさせる事故など)がときどき報道されますので、そういった面が無いとは言えません。
ただし、あん摩マッサージ指圧師や柔道整復師などの国家資格者が施術する「指圧院」や「接骨院」などは無事故かといえばそうでもありません。
「あばらの軟骨を負傷し、首も捻挫した」(30代女性)といった相談があったようです。
参考WEBページ「手技」でけが相談増加 整体など
マッサージ師は3年間の授業でしっかりと実技や解剖学などを学び単位の取得が必要ですから、知識が豊富なことは間違いないでしょう。
しかし、国家試験で試されるのは知識だけです。実技試験はありません。
まずはマッサージ師になるには
あん摩マッサージ指圧師の国家資格について
素晴らしい技術を持った整体師もいれば、技術の足りないマッサージ師もいるということです。
資格の上にあぐらをかいて、不勉強な先生がいることも事実です。
6.マッサージ師が整体師を嫌い、攻撃する理由(推測)
第4回「あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師 免許取得者の進路状況アンケート調査」によれば、
あん摩マッサージ指圧師(はり師や柔道整復師所持やリラク形態も含めて)の70.3%が月給25万未満であり、あん摩マッサージ指圧師として開業している層では、36%が月収10万円以下。
この、あん摩マッサージ指圧師の収入の低さには様々な理由がある。
あん摩マッサージ指圧師の行う業は業務独占資格であるが、例えばリラクゼーション店が○○マッサージなどと頭に文字を加えると、あん摩マッサージ指圧行為とは別のものであるという厚生労働省の見解があり実質、業務独占はできていない。
また、リラクゼーション店は保健所や厚生労働省の管轄外であり、あん摩マッサージ指圧院にある広告規制や建造物間取り等の規制は全くない。(広告しても良い事項にあん摩マッサージ指圧院は、適用疾患も料金も含まれていない)
参考WEBページ http://ja.wikipedia.org/wiki/あん摩マッサージ指圧師
つまり、国家資格のマッサージ師は医師、弁護士と同様に、 弱み=痛みを持った人を救うことは、 営利のみを目的とした他の仕事よりも名誉ある職業であるから、 苦しむ人が飛びつきたくなるような宣伝をしてはならないという意味の規制です。
ところが、民間の整体師認定者は、国家資格者に対する“広告の制限”を受けず、 営利を目的とした有利な宣伝ができるので、特異な技能・経歴や効果などの宣伝をします。
ひどい矛盾ですが、国家資格者は法律で宣伝を規制され、 民間資格者は医師法やあはき法、公序良俗に反しない限り、 有利な宣伝広告をしての営業が認められています。
参考WEBページ 手軽な「癒やし」急増 「マッサージでない」 リラクセーション200店超 石川県内
このようなことから、300万~500万もの大金と、3年以上の月日を勉強に費やしたのに報われないマッサージ師さんにとって、「ラクしてグレーゾーンで儲けてる」整体師が憎い、なんとしても引きずりおろしたい、いう気持ちは非常によくわかります。
まとめ
「治したい」とか「原因がよくわからない」とか「いつもと違う」というつらい症状がある方は、まずはお医者さんに行きましょう。
整体師がそのようなことを言うのは意外に思われるかもしれませんが、「整体やマッサージを受けていい状態かどうか」「整体やマッサージが有効な症状かどうか」、「骨や内臓に異常がないかどうか」などは知っておくべきです。病院でなければ正確にわからないこともたくさんあります。
早く正しい治療をしなければ、悪化させてしまう可能性もあります。
国民生活センターでは、「疾病がある人は医師に相談してから受けて」とアドバイスしているそうです。
私も、「これはちょっと心配だな」と思うお客様に対してはその部分の施術を控え、「病院での診察」を必ずおすすめしています。
「病院に行って、異常はないと言われたけどツライ症状がある」
「病院で気のせい、歳のせいなどと言われた」
「病院に行くほどではないし、不調の原因もわかってるんだけどなかなか自分では・・・」
「特別痛いところや悪いところはないけど気持よくストレスを解消したい」
そのような方に整体やマッサージはおすすめです。
そこで、「どこに行くか」の選び方ですがまずはそのお店の口コミやブログを参考にしましょう。
施術者の顔写真や店内及び店頭の写真、経歴、アピールポイント、料金設定などを公表しているところ、長く経営している店が信頼できます。
料金は高すぎず、安すぎないところが無難です。
実際に自分に合うかどうかは行ってみないとわかりませんが、その際のポイントは以下のとおりです。
●売りつけない
回数券や枕、マッサージクリームなどを販売している店もあります。
それを無理に売りつけたりしつこくすすめるような店は当たり前ですがよくありません。
●優しく声をかける/説明をする
施術前にきちんと状態確認をし、施術中に「痛くないですか」、施術後に「お体の感じはどうですか」などの気遣いがあるお店がおすすめです。
声がけや状況説明、日常生活でのアドバイスなどをしないお店は知識がないかやる気が無いかだと思います。
●余計なおしゃべりはしない
お客様の雰囲気や状態に合わせてまじめに仕事をする人であれば、自分本位にべらべらと喋ったりはしません。
●聞いてみる
わからないことや心配なことは聞いてみましょう。応え方で性格(考え方)や知識量がわかります。
これは来店前の電話やメールでも使えます。
●気持ちいい/信頼できる
これが一番大事です。安心できる人のもとで、気持ち良い刺激を受ければ、最高にリラックスできます。
言葉が通じないと不安になりますので、外国の方が働いている店の場合、そこも考慮してください。
●術後に水分補給ができる
マッサージや整体は、循環を助け体の中の老廃物を排出しやすくします。
施術後は特にそういう状態になっているので、水分を多くとる事で施療効果がよりいっそう期待できます。
アフターティーのサービスが有るお店がおすすめです。
長くなりましたが、以上です。ご参考になれば幸いです。
関連ページ
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